■ 2012/8/10 選択肢のパブコメに意見提出

「六ヶ所再処理工場」に反対し放射能汚染を阻止する全国ネットワークは、2012年8月10日に、内閣府エネルギー・環境会議事務局の「エネルギー・環境に関する選択肢」に対する御意見の募集(パブリックコメント)に下記のように意見を提出しました。

2012年8月10日

「エネルギー・環境に関する選択肢」に対する意見(パブリックコメント)

「六ヶ所再処理工場」に反対し放射能汚染を阻止する全国ネットワーク

(呼びかけ団体)

生活協同組合あいコープみやぎ

グリーンコープ共同体

生活クラブ事業連合生活協同組合連合会

大地を守る会

特定非営利活動法人日本消費者連盟

パルシステム生活協同組合連合会

●意見の概要(100字以内)

ゼロシナリオを選択し、速やかにゼロ、永遠にゼロを求めます。

原発にメリットがありません。発送電分離をすべきです。公募公選による原子力廃炉委員会の創設を求めます。今回の国民的議論は欺瞞的です。

●意見およびその理由(2500字以内)

1.ゼロシナリオを選択し、2030年ゼロであるのはもちろんのこと、速やかにゼロ、永遠にゼロを求めます。

1)原子力発電の速やかな停止を強く要望します。

数多くの巨大地震が予測されているなか、福島第一原発事故の規模と深刻さをも凌駕する被害を危惧しています。また、日常的な原発の運転に伴う被曝労働や、子孫に負担を残す放射性廃棄物の管理、許しがたい差別と無責任な管理体制など、原子力発電はあまりにも大きな問題を抱えています。

しかし、提示された3つの選択肢はいずれも、以前の安全神話そのままに何の反省もなく「原発の事故は起きない」「放射性廃棄物はいずれ問題なく処分できる」という前提で書かれていて不適切です。

私たちは、全ての原子力発電所の再稼動を行なわず、原子力発電を速やかに停止することを強く要望します。「ゼロシナリオ」の実現に、2030年を待つ必要はありません。

2)「15シナリオ」「20-25シナリオ」は原発の増設や運転期間延長が必要な選択肢であり、「原発依存度を低減する」という基本理念とは相反する選択肢です。

「40年廃炉」が守られるのであれば、現在50基ある原発は2030年時点で20基になります。その稼働率を異常に高い80%にしなければ、原発比率15%を維持できません。ましてや「20-25シナリオ」は、原発の増設、運転期間延長がなければ成り立ちません。いずれのシナリオも「原発依存度を低減する」ではなく、「原発依存を続ける」という選択肢であり、論外で非常に不適切な選択肢の設定です。

3)あるべき社会像を描き、政策立案に臨むべきです。

そもそも、大飯原発の再稼働がなくても電力不足にならずに今夏を過ごせているのに、その事実を隠ぺいするために再稼働が強行されました。2030年まで待つのは、「原子力ムラ」といわれる勢力の温存策であり、「原発依存度を低減する」という合意をいずれ反故にするための猶予を与えるためです。

原発に依存しない方針が確認されている中で、2030年度時点での「定量的な選択肢」を国民に問いかけることにどのような意味があるのでしょうか。すでに決めた「脱原発依存」をすみやかに実施に移すべきです。

2.原発にはメリットがないという結論を正しく国民に伝え、利用者が自由に発電方法を選べる発送電分離をすべきです。

広島・長崎の原爆の威力を目の当たりにした国民に対して、その膨大なパワーを平和利用するという原発が、安価でクリーンで安定的な電源であるという夢のような話を、国は騙り(かたり)続けてきました。

かつて政府は、原発の発電コストが極めて安価であると試算してきましたが、原発と核燃料サイクルに投入されている税金、使用済み燃料の処理費用の見積もり、原発事故処理費用などを積算すれば、全く割の合わない発電方法なのは明白です。また、核燃料採掘鉱山周辺の環境汚染、運転中に排出される放射能や、原発労働者の被曝、使用済み燃料に含まれる多量の放射性廃棄物のためにとても汚い発電であることも知られるようになりました。そして、度重なる事故と不祥事により、安定した稼働率で運転ができません。

このように「原発にはメリットがない」という事実が十分に国民に知らされないまま、経団連に代表される非現実的な夢物語を信じている人々によって政策がミスリードされ、利権を守るための意図的な方向へと国民の議論が誘導されています。

今回の選択肢に発送電分離のシステム改革の内容が盛り込まれていないのは問題で、所有を分離するべきです。電力会社の持ち株会社の傘下に発電会社と送電会社を分けておく「法的分離」では、電力会社の影響を受けるので、システム改革の選択肢にはなりえません。再生可能エネルギーの普及を妨げることのないように送電の所有権を分離し、電気を使う人が支障なく選べるようにすべきです。

3.政府に原発の管理は任せられないので、公募公選による原子力廃炉委員会の創設を求めます。

日本政府には、福島第一原発の事故対応において最大限の努力で国民の生命を守ろうとする姿勢が見られません。また事故から1年以上経過した現時点でも、事業者も行政も政治家も誰ひとりとして、その責任を取っていません。これまで原子力を推進してきた人々(原子力ムラの人々)には、今後原発を運転する資格がありません。それは、重大な交通事故を起こした人の運転免許が取り消されることと全く同じことです。

これまでの事故調査により、当事者である電力会社が、独占事業であることに胡座をかき、不適切な癒着や献金問題、やらせメール問題を引き起こしながら、原発の規制を逃れ、地震と津波を防ぐことを怠って、今回の事故を招いたことを明らかにしました。また、それを規制すべき保安院や原子力安全委員会は、十分な技術力がなく、電力会社の怠慢を許していたことを明らかにしました。政府はこの癒着構造を放置して、国策として原子力を推進し続け、反対する者たちを排除する原子力ムラに加担してきました。この無責任体制によって、想定外ではなく、予言された事故のひとつとして原発事故が起きたのです。このままでは、再び原発事故が起こる可能性はとても大きく、私たちはそれを許容できません。

大飯原発の再稼働を無免許状態の電力会社と保安院に任せた日本政府は、国民の信頼を完全に失っています。今後の原発の廃炉管理を政府に任せることができません。全く新たに原子力廃炉委員会をつくり、公募公選による新しい委員と事務局の元で、全ての原子炉の廃炉手順を安全に進めていくことを求めます。

4.今回の国民的議論は、原発の温存を目的に設定された欺瞞的なものであり、おおいに疑問があります。

3つの選択肢の設定の仕方、それぞれの表現などは、作為的、誘導的といわざるを得ません。また意見聴取会の開催については、告知から締切りまでの時間の短さ、運営方法など、大いに疑問があります。電力会社社員の発言など、もってのほかです。

以上