2021/04/30 放射能処理水の「海洋放出」の閣議決定に抗議します

阻止ネットは放射能処理水の「海洋放出」の閣議決定に対して、下記の内容を意見表明しました。

2021年4月30日

「六ヶ所再処理工場」に反対し放射能汚染を阻止する全国ネットワーク

放射能処理水の「海洋放出」の閣議決定に抗議します

私たちは、2007年に6団体の呼びかけにより発足した『「六ヶ所再処理工場」に反対し放射能汚染を阻止する全国ネットワーク(以下「阻止ネット」)』です。

「阻止ネット」では、「豊かな自然環境・生命・食べ物を放射能汚染から守ること」を目的に、消費者と生産者とが連携し、動き出せば膨大な放射能を放出し続けることになる六ヶ所再処理工場の稼働に2007年から反対してきました。さらに、2011年3月11日に発生した東日本大震災に伴う東京電力福島第一原発の事故で深刻な放射能汚染が広がった事実を受け、核燃サイクルの問題だけでなく脱原発を方針に掲げ活動してきました。

2021年4月13日に菅内閣は、東京電力福島第一原発で生じている放射能処理水の処分をめぐり、「海洋放出」を閣議決定しました。私たち「阻止ネット」は、この決定に対して以下の点から強く抗議します。

1.民主的な合意形成が行われていません

報道によれば、4月7日に菅首相と会談した全国漁業協同組合連合会の岸宏会長は「『絶対反対』との考えはいささかも変わらない」との立場を明らかにしています。地元・福島県漁連の野崎哲会長も「海洋放出に反対の姿勢は変わらない」と表明しています。また、福島県内でも県議会をはじめ県内市町村の約7割の市町村議会が、海洋放出に反対または慎重な対応を求める決議や国への意見書を採択しています。

2020年2月に政府の小委員会が公表した報告書には、放射能処理水の扱いについては「現地や関係業界と丁寧に議論をして、国民的な合意ができたら政府が決定する」としていました。経済産業省は2020年4月以降、自らが選んだ産業団体や自治体の代表からの「御意見を伺う場」を福島や東京で計7回開催していますが、事前に経済産業省から説明を受けている自治体の首長や各団体の代表が一人ずつ意見を述べ、質疑はほとんど行われない、という極めて形式的な会合でした。現地や関係業界との丁寧な議論と公聴会を開き国民的な合意を図るべきです。

経済産業省が公募したパブリックコメントの大半は、放射能処理水の安全性に対する懸念、陸上保管などの処分方法の見直し、合意プロセスへの懸念など、「海洋放出」に対して否定的なもので占められていました。多くの問題を抱えたまま、関係閣僚会議で政府の方針を決定した上で対話を求めることは、政府の考えを押し付けるだけのもので、対話でも民主的なプロセスでもありません。

2.トリチウム以外の放射性物質の残留量や総量が明らかになっていません

放射能処理水には、トリチウム以外にもさまざまな放射性物質が含まれています。現在、東京電力はトリチウム以外の放射性物質について「二次処理して、基準以下にする」としているが、どのような放射性物質がどの程度残留するか、その総量は示されていません。海洋放出した場合、これらの放射性物質の環境蓄積、生体濃縮などが起こりえるため、これらの取り込みによる人々の内部被ばくも懸念され、「豊かな自然環境・生命・食べ物を放射能汚染から守ること」を目的としている「阻止ネット」としては、安易に海洋放出する案は到底受け入れることができません。

また、東京電力はこの間、柏崎刈羽原発でテロ対策施設の不備や不正ID使用などの問題、福島第一原発の4000基の内容物不明のコンテナ問題など、管理と情報開示について次々と問題が明らかになり、放射能処理水を管理する資格があるのかも問われています。東京電力に任せるのではなく、政府として処理水に含まれる放射性物質の状況把握し公開することを求めます。

3.処理水の海洋放出による漁業と子供たちの将来への悪影響が懸念されます

2011年3月の事故により福島県の漁業は大打撃を受け、全面的な操業自粛となりました。その後試験操業が始まり、全魚種が出荷できるようになったのは2020年2月になってからです。漁獲量は震災前の2割に戻ったと言われていますが、そこに放射能処理水の海洋放出による風評被害が出れば、漁業に壊滅的な打撃を与えることは必至です。これまで復興に努力してきた漁業関係者に大きな失望と与え、再び漁民の生活や希望を奪い去ることになります。

また、有害物質に対する人権に関する特別報告者、身体的および精神的健康に対する権利に関する特別報告者など、国連の専門家ら5人が2021年3月11日に「汚染水を太平洋に放出することは、子どもたちの将来的な健康リスクを高める」など、人権侵害にあたるとの声明を発表しました。海洋放出については、アジアの近隣諸国をはじめ、海外の国や市民からも多くの批判の声が上がっています。

地元の漁業者や市民との合意形成を行わずに、海外の国からも批判があるなか「海洋放出」を閣議決定したことは、「海洋放出ありき」で進められてきたものであり妥当性に欠けるものです。放射能処理水に含まれる放射性物質の全容把握を優先させ、保管するタンクの新たな敷地の確保や他の代替案の再検討を強く求めます。

「六ヶ所再処理工場」に反対し放射能汚染を阻止する全国ネットワーク

呼びかけ団体 生活協同組合あいコープみやぎ

一般社団法人グリーンコープ共同体

生活クラブ事業連合生活協同組合連合会

特定非営利活動法人 日本消費者連盟

パルシステム生活協同組合連合会