a 阻止ネット 2016年度 政策提言

阻止ネットは、2016年10月の「止めよう六ヶ所再処理工場 2016集会」で採択した下記の提言を行政官庁におとどけしました。

2016年度 阻止ネット 政策提言

2016年10月28日「六ヶ所再処理工場」に反対し放射能汚染を阻止する全国ネットワーク

呼びかけ団体: 生活協同組合 あいコープみやぎ

グリーンコープ共同体

生活クラブ事業連合生活協同組合連合会

大地を守る会

特定非営利活動法人 日本消費者連盟

パルシステム生活協同組合連合会

「『六ヶ所再処理工場』に反対し放射能汚染を阻止する全国ネットワーク(略称:阻止ネット)」は、添付資料①にある6つの呼びかけ団体の呼びかけに賛同する650の団体・個人によるネットワークであり、核燃料サイクル(特に六ヶ所再処理工場)の日常運転による放射能や、福島第一原発のような原発事故により、日本の空や海が放射能汚染されることを阻止するために添付資料①裏面のような活動を継続してきました。

詳しくは、阻止ネットのホームページ( http://www.soshinet.org/ )でご確認ください。

私たちは次の3つの視点から専門家を講師に招いて内部学習会を実施し、問題点の抽出と提言内容の検討を行いました。

1.運転費用の問題 (電力自由化(添付資料②)、使用済燃料再処理機構(添付資料③))

2.火山の問題 (十和田カルデラ火山(添付資料④))

3.放射能汚染の問題 (再処理工場のアクティブ試験結果と運転計画(添付資料⑤))

本政策提言は、この内部学習会の成果を踏まえて、以下の18項目の中身にまとめて、2016年10月28日の阻止ネット2016集会で確認したものです。提言内容について政策実現していくことについてリスクコミュニケーションの場をつくっていただけますように要望いたします。

提言内容

【電力自由化】

2016年度から低圧電力(一般消費者向け)の電力自由化が始まり、私たちも自分たちが使用する電気を選ぶことができるようになりました。

  1. 送配電網の利用料金である「託送料金」は地域独占で送配電を行う大手電力会社が決めていますが、企業向けの高圧電力に比べて一般消費者向けの低圧電力が著しく高く、またその内訳が不透明です。託送料金の詳細な内訳と原価を公表し、合理的な金額に値下げしてください。特に、原子力関連のコストを託送料金に含めないでください。

  2. 2020年に予定している「発送電分離」をしっかりと行い、送電部門への既存大手電力会社の支配力を排し、高い独立性を保った中立公正な事業としてください。

  3. 各電力会社の電源構成や環境負荷に関する情報の開示等、一般消費者が選択できる条件を整備し、電力自由化によって再生可能エネルギーが普及する流れを促進してください。

  4. 私たち消費者は、再生可能エネルギーの供給に力を入れている電力会社と契約することで、再生可能エネルギーの開発と普及の応援をしましょう。

【使用済燃料再処理機構】

再処理—プルサーマル政策はワンススルー(再処理しない場合)に比べてコスト的に高いことは原子力委員会によって2004年に確認され、さらに2012年にも再び確認されています。しかし、政府は使用済み燃料の再処理を継続し、2018年に期限切れになる日米原子力協定を更新するために、十分な国会審議も経ずに、使用済燃料再処理機構を設置して、電力会社に再処理費用を拠出させる法律を可決しました。

  1. 採算があわず必要性もない使用済燃料再処理事業を無理やり継続する小手先の措置をやめ、新しい機構を創設するような屋上屋を重ねる無駄を排してください。

  2. 電力会社から徴収する拠出金をMOX燃料加工関連や中間貯蔵費用などの原子力政策費用に使うことで、市民の電気料金に負担させないでください。

  3. 改めて再処理事業の是非について、国会内に委員会を設置し、議員に加えて有識者や市民委員を広く選任して、政策論、安全論、経済論、地域経済論などあらゆる側面から徹底的な議論を行ってください。その議論の経過をすべて公開し、広く国民が議論に参加する機会も設けてください。

【十和田カルデラ火山】

約千年前と約20万年前に十和田カルデラ火山の噴火があり、約40万年前と76万年前・90万年前に八甲田カルデラ火山の噴火がありました。当時の火砕流は六ヶ所再処理工場の敷地に届く距離まで到達しました。

六ヶ所再処理工場にそのような火砕流が流れ込むと、作業員が立ち入ることができなくなり、保管されている様々な核燃料物質の冷却を継続できなくなります。高温で厚く堆積する火砕流だけでなく、軽石や火山弾の岩石による被害も想定されます。

  1. 北海道の洞爺火山灰は核燃施設を飛び越えて、八戸市まで飛来して地層を形成しています。しかしながら、核燃施設への影響評価では、160km圏内の火山しか評価対象としていません。北海道の火山についても再評価してください。

  2. 十和田湖の地下では、定常的に地震が発生しています。特に日本各地の火山では、2011年の東日本大震災の後で地震が活発になっているとされています。十和田火山と八甲田火山について再評価してください。

    1. 十和田山が噴火した場合の火砕降下物の積層のシミュレーションでは、噴火時の火山爆発指数をVEI5としていますが、1万5千年前に起きたVEI6以上の噴火が再び起きないと想定するのは楽観的です。むしろ、3万年前に大噴火して、1万5千年前に再び大噴火したのであれば、次はもうすぐかもしれないと考えて、再評価をしてください。

  3. 六ヶ所村の核燃施設は、日本の火山フロントの直近にあります。新火山の生まれる可能性のある場所です。現存する活火山に限って影響評価をするのではなく、危険な場所であるという認識をもって、再処理施設を廃棄してください。

【放射能汚染】

六ヶ所再処理工場は、ラ・アーグ再処理工場の運転実績を参考にすると、定常運転時においてトリチウム・クリプトン85・炭素14・ヨウ素129などの環境汚染が進行し、特にトリチウムによる海洋生態系への影響が懸念されます。海産物の有機結合型トリチウムの増加が、人間の健康に与える影響が懸念されます。

また、セラフィールド再処理工場の事故を参考にすると、小中規模の事故発生時には廃液等の漏洩などにより、海岸や海水・海産物の汚染が急速に進み、漁業が衰退し、周辺の人々への健康被害が増大します。

ウラル核惨事として知られるマヤーク核技術施設の事故を参考にすると、東北地方・北海道が高濃度に汚染され、人命にも大きな影響を与え、広範囲の国土を失うことが想定されます。

  1. 海産物のストロンチウム汚染濃度の測定結果と、将来の予測濃度見積もりをすべて公表してください。

  2. 六ヶ所再処理工場の放出放射能の量について、他の原子力施設と同様に線量告示を基準値として適用してください。

  3. 六ヶ所再処理工場での重大事故時の放射能拡散シミュレーションを求めます。また、その場合の住民の避難計画を示してください。

  4. 六ヶ所再処理工場にミサイルが着弾した場合の被害予測を公表してください。

【全般的政策提言】

六ヶ所再処理工場の竣工の見通しが立たず、高速増殖炉もんじゅの新しい運営主体も定まらない現況のなかで、核燃料サイクル政策の行き詰まりは明らかです。東電福島第一原発事故が収束する目途は立たず、今も9万人もの福島の人々が故郷を離れ、苦難の避難生活を送っているなかで、国が行うべき政策は原発再稼働ではなく、避難者への継続的な支援です。

  1. 核燃料サイクル構想を破棄し、使用済み核燃料を再利用しないでください。不要な再処理工場を止めてください。

  2. すべての原発の再稼働を中止し、廃炉へ向かい、原子力を放棄することを新たな国策として決定してください。

  3. 避難指示解除、損害賠償と住宅支援の打ち切りを撤回し、最低限、国際的な勧告に基づく公衆の被ばく限度である年1ミリシーベルトを満たすまで賠償や支援を継続してください。